たいちょうのへや |
『ヤハズソウ(矢筈草)』 |
せいし通信 10月号 |
9月末に放送が終了した朝の連続テレビドラマ「らんまん」は、植物学者、牧野万太郎の生涯を描いています。ドラマの牧野万太郎は、本名「牧野富太郎」。江戸幕末動乱の時代、文久2年(1862年)、土佐国佐川村(現、高知県高岡郡佐川町)に生まれました。日本の「植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎は、小学校に入学したものの2年で中退し、好きな植物採集、そしてその写生や観察などに明け暮れる生活を送るようになります。そして江戸時代の本草学者、小野嵐山の「本草網目啓蒙」に出会い本草学、とりわけ植物学に傾倒し、自らを「植物の精」だと感じて、日本中の植物を嵐山の書のように纏め上げる夢を抱きます。 22歳の時に、東京大学の植物学教室の出入りを許され、教室の資料や文献をもとに研究に没頭します。その時富太郎は東アジア植物研究の第一人者であった、ロシア帝国のカール・ヨハン・マキシモヴィッチに標本とその図を送りました。富太郎は天性の描画力にも恵まれていて、マキシモヴィッチからは図を絶賛する返事が届いています。 26歳の時、かねてから構想していた「日本植物志図篇」の刊行を自費で始めます。印刷工場に出向いて石板印刷技術を学び、絵は自分で描きました。これは当時日本には存在しなかった日本の植物誌、現在の植物図鑑ともいうべきものでした。そして27歳で新種の植物を発見し、そのヤマトグサに学名を付けました。28歳の時には標本採集中に、偶然見慣れない水草を採集。これは世界的に点々と隔離分布するムジナモの日本での新発見であり、これを学術論文で世界に発表し、世界的にも牧野富太郎の名が知られるようになりました。 しかし、富太郎の研究や生活を資金的に支えてきた実家の商家、造り酒屋の「岸屋」がついに破綻してしまいます。その岸屋の家財を清算するために帰郷した富太郎は、帰郷中は地元の植物の研究をしたり、西洋音楽の演奏会を開いて自ら指導し、指揮者として棒を振ったりしていて、富太郎はどこか楽観論者的な所もあったようにも思います。 その後知人らの努力により大学に戻って研究を続けることができるようになります。その後生活は困窮を極めながらも、様々な支援者より財政的な支援を受けて、1900年、38歳で「大日本植物誌」を刊行し、1916年には個人で「植物研究雑誌」を創刊。1927年、65才の時に東今日帝国大学、理学博士が授与され、1940年、78歳で研究の集大成である「牧野日本植物図鑑」を刊行。1957年94歳で死去。その生涯に命名された植物2500種以上、新種発見600種余りとされています。「雑草という草は無い」牧野富太郎を象徴する言葉です。 虫や昆虫好きの子どもたちは多いのですが、動かない花や植物に興味を示す子どもはあまり見かけません。野の花や草を摘んで幼稚園に持ってくる子も以前のようには見かけません。先日、年長組と一緒に浦山公園に出かけたとき、昼食をとっていた傍らに「ヤハズソウ」の群落がありました。この草は葉を引っぱると必ず葉脈のところからⅤ字形に切れて、その形が矢の羽の後ろ部分と似ているので「矢筈草」と名付けられています。私が子どもの頃には、よく引っぱって遊んでいたことを思い出しました。子どもたちにも、葉が面白い形に切れることを説明すると、数人の子どもたちが遊んでいました。牧野富太郎の時代とは比べようもありませんが、子どもたちがもっと草花や植物が身近にある自然があふれる環境があれば、いまの子どもたちにも色々な発見があるような気もするのですが。 ところで、ご存知でしたか。幼稚園の花壇の一角に植えられている「フウセンカズラ」。緑に膨らんだ風船のような実が枯れて茶色になり、その袋の中の黒い種には見事な白いハートマークがついているのです。自然の造形の面白さやいたずらには驚くばかりです。 |
理事長 遠山 和良 |
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