５月は年長組・年中組の子どもたちと一緒に鳥栖の朝日山にハイキングに出かけました。山といっても朝日山は小高い丘陵程度の山で、山頂下の駐車場から整備された山道を歩けば、ものの10分程度で山頂展望台についてしまう程です。それで年長組と年中組では多少コースは異なるものの、山裾を一周しながら登るコースを選んで登り始めます。細い山道には急こう配の上り坂や下り坂があり、山頂展望台までは一時間程の行程です。

　この朝日山ハイキングは、もう30年以上続く恒例のハイキングなのですが、この2、3年特に思うことは、子どもの体力そのものはそれほどの変化は見られないのですが、体のバランスを取る調整能力が明らかに低下していると思われることです。特に傾斜のきつい下り坂で身体を重力に対して垂直にバランスを取ることは難しく、年中組では殆どの子どもたちが手を取らないと坂を下ることができません。

　文部科学省が行っている｢体力・運動能力調査｣によると、現在の子どもの体力・運動能力のテスト結果を、その親の世代である30年前と比較すると、殆どのテスト項目で子どもの世代が親の世代を下回っています。その一方身長、体重などの子どもの体格は逆に親の世代を上回っています。しかし体格が向上しているにもかかわらず、体力・運動能力が低下していることは、身体能力の低下が深刻である状況を示しています。

　幼児期の体力・運動能力の低下は、将来にわたり病気やケガをしやすくなるといわれています。その体力・運動能力の低下の原因としては、①外遊びの減少(治安や騒音の問題で公園などでの遊びが制限されることなど)、②生活の変化(ゲームなどの室内遊びが主流となり身体を動かさなくても遊べる。また家電製品などの発達により家事手伝いなど、身体を動かす機会がないなど)、③不規則な生活習慣(共働き家庭が増えて、両親とも夜遅くまで就寝できない。親の不規則な生活スタイルは子どもに影響し、夜更かしや寝不足が続くと子どもの成長ホルモンが減少して筋肉の発達を妨げる)などが原因として挙げられています。

　運動能力に係わる神経伝達システムは5～6才までに大人の8割程度まで発達するといわれています。幼児期に「走る・跳ぶ・転がる・ぶら下がる」などの基礎的な動作をどれくらい経験したかにより、その後の運動能力の発達に影響します。また子どもの体力の低下は、将来的に国民全体の体力の低下につながり、生活習慣病の増加やストレスに対する抵抗力の低下などを引き起こすことが懸念されます。

　幼稚園生活の中では、子どもたちの体力や運動能力の向上を目指して、発達段階に応じた活動がプログラミングされています。家庭でも、室内遊びだけではなく、自然の中で子どもたちが自分の体を思うように動かして、存分に遊べる機会を多く持って頂きたいと思います。

　苦労して登った朝日山展望台でヤッホー!!を連呼する子どもたちの顔は輝いていました。山頂から降りて、広場でお母さん手作りのお弁当を頬張る子どもたちの顔も、これまた輝いていました。この輝く子どもたちの笑顔が沢山見られる幼稚園時代であって欲しいと思います。