えんちょうのへや |
『クスサン(楠蚕)』 |
せいし通信 7月号 |
今年もお弁当をもって、年長組と一緒に水沼の里記念公園へ出かけました。この数年、年長組の恒例行事となっていて、子どもたちも楽しみにしている一日です。公園内に何本もあるヤマモモは、今年は熟しているのかな?と内心楽しみに出かけたのですが、まだ堅い緑色のままで残念。あと2週間ほどで赤く熟して食べごろになると思いますので、改めて親子でお弁当をもって出かけてみるのも楽しいと思います。 芝生の広場や大型遊具で思い切り身体を動かして遊んで、それからおいしいお弁当をいただきました。今年も年長組との公園の一日は昨年7月の巻頭言「年長組との一日」に記述したとおりだったのですが、去年にも増して大発生していたのが、クスサン(楠蚕)という大型の蛾の幼虫です。 クスサンは、チョウ目ヤママユガ科の大型の蛾で、4、5月頃卵から孵化して幼虫となり、7月頃に楕円形の堅い網目の繭を作ってサナギになります。そして9〜10月頃に羽化して成虫になり飛び立ちます。子どもたちが出会ったのは、最終齢に近い幼虫で体長は10p近く、パステルブルーの体に、背中には白くて長い毛が密生しています。この幼虫の別名がシラガタロウというのも、何となく納得です。子どもたちは恐る恐る近づくだけで、誰も触ろうともしません。この幼虫には毒性はありませんので、手にとってこの幼虫について、そして近くのプラタナスの木には、昨年羽化したあとのマユが残されていましたので、この蛾の生態について少しだけ話をしました。 子どもたちは興味津々。ついに「ぼくも触ってみる」と一人の男の子が幼虫を手に取ると「白い毛がフワフワして気持ちがいいよ」。それから次々に子どもたちが手を出してその幼虫の感触を確かめています。いつもは虫なんかには、例えダンゴムシでさえ手を出さない子も、自分の手に幼虫を乗せて観察しています。自分で確かめてみたい、もっとこの幼虫について知りたいという欲求が、虫に対する嫌悪感を上回ったのです。 子どもたちの、この知識に対する興味や関心、そして欲求の旺盛なことにはいつも感心します。しかし、この興味や関心そして欲求こそが、子どもを行動に駆り立てる原動力なのです。幼児教育の原点はまさにそこにあります。教師は子どもたちの興味や関心を引き出し、子どもたちはその物事や事象に関わって考えたり、解決策を模索したり、行動すること、そしてその過程で得られる知識や経験が子どもたちに蓄えられ、次の行動や判断の基準となることを繰り返して成長していくのです。そしてそこには、子どもたちの思いや行動に共感し、また共有してくれる親や教師の存在が欠かせません。公園から幼稚園に帰った後、年長組の「お知らせ広場」には、この幼虫の一生が、写真と説明文を添えて張り出され、子どもたちは興味深そうに眺めていたことでした。 ところで、ご存知でしたか。釣りや手術用に使うテグス。第2次大戦後にナイロン製が出現するまでは、このクスサンの幼虫の腹の中にある絹糸線(マユの糸を作り出す器官)を取り出して、酢で処理したものを引き伸ばして作られていたそうです。そういえば、テグスは漢字で天蚕糸(テグス)と表記されていました。
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園長 遠山 和良 |
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