えんちょうのへや |
『ことばと絵本』 |
せいし通信 夏休み号 |
この夏休み号でお薦めの絵本をご紹介していますが、この絵本と子どもたちのことばの習得の関係について考えてみたいと思います。生まれたばかりの赤ちゃんは周囲の大人の話し声を、音律(メロディのようなもの)として捉えています。そしてそのうちにそのメロディの中から、ひとつひとつの単語の区切りを発見し、取り出せるようになります。この作業ができないとことばの習得は不可能ということになります。ですからお母さんが、赤ちゃんに話しかけるのに、自然にゆっくりと、赤ちゃんと同じピッチの高い声で話しかけるのは、それが赤ちゃんの注意を引くことを感覚的に捉えているからだと考えられるのです。 ある実験によると、生後九ヶ月の赤ちゃんに1日2回、半月にわたって計30回1冊の絵本を読んでやると、その子は文中の単語を記憶する事が判明しているそうです。九ヶ月の赤ちゃんといえば、まだひと言も意味のある単語さえも話せない時期です。ということは、赤ちゃんはまず単語を音として覚え、その後にそれを口にするようになるということです。もちろんこの発達初期にとどまらず、周囲からのことばの働きかけをシャワーのように浴びることにより、言語能力は発達し知能の基礎が形作られるようになるのです。ですから理解力の乏しい子どもに絵本を読んでやっても意味がないのでは、というのは大人の発想であって、子どもたちには当てはまらないのです。 絵本の読み聞かせが効果的なのは、単に耳から情報が入っていくだけではなく、そこに絵との組み合わせがあるからです。何度も繰り返し同じ絵本を読んでもらうと、こういう場面では、こういう単語というようにペアで刺激が与えられ理解の促進につながります。そうして子どもたちは、すべての物や動作一つをとっても名前があることを認識するようになります。また、その先にあることばとことばが紡ぎ合うことによって生み出される物語についてのイメージさえも認識できるようになります。 子どもたちに、何冊も違う絵本を見せていると必ずといってよいほど執着を示す本がでてきます。それは面白いことに、一人ひとり違っていて、またどうしてそれが好きなのか大人にはほとんど説明がつきません。大人の側から見れば、どうしてこれが?と思うようなものも少なくありません。 そして子どもたちは、その「お気に入り」本ばかりを読むようにせがみます。大人からすれば、他のいろんな絵本も読めばよいのにと思いがちですが、子どもたちはこの「お気に入り」の一冊を読んでもらうのが好きなのですから、それに徹底的に付き合うことです。最後には、子どもたちは内容を全部暗記してしまうかもしれません。しかし、そこまで行き着いたときに言葉というものが子どもたちの心に根付き、やがて「自分のことばで語る」能力が培われることになるのです。 この夏休み号では、年齢ごとにたくさんの絵本を紹介しています、また絵本の貸し出しもしていますので、この夏休み期間中に、子どもたちの「お気に入り」の絵本をぜひ見つけてください。 |
園長 遠山 和良 |
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