たいちょうのへや |
『日本昔話』 |
せいし通信 7月号 |
『むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました』 このフレーズで始まる日本昔話。子どもの頃には誰もが手にし、絵本で読んだ昔話。 この昔話はどこで生まれどのように現在も続いているのでしょうか。 時代をさかのぼると、平安時代の説話集には「こぶとり爺」や「わらしべ長者」。室町時代の御伽草子は絵を伴って「浦島太郎」「瓜姫物語」が、そして江戸時代になると、子ども向けの絵本である赤本に「かちかち山」や「桃太郎」が現れます。これらすべての物語は、現代にも語り継がれ また読み継がれています。日本は古くから昔話を大切にしてきた国だったのです。 いまも人気の「桃太郎」の冒頭のフレーズは「昔々、ある所に、おじいさんとおばあさんがいました。ある日おじいさんは山に柴かりに、おばあさんは川に洗濯にいきました」と始まります。 この冒頭のフレーズの「昔」「ある所」「おじいさんとおばあさん」を3つのキーワードとして考えてみましょう。 まず「昔」、平安時代の「竹取物語」は、「今は昔、竹取の翁というものありけり」と始まります。「昔」は、かぐや姫が竹の中から見つかり、桃太郎が桃から生まれるような不思議な時が存在したのです。この時は歴史的な時ではなく、人が神や動物と共生していた原初的な時を表わしています。また二つ目のキーワードであるお話の場所は「ある所」、三つ目の人物は「おじいさんとおばあさん」。昔話では特定の地名や人名が語られることがありません。いつも曖昧です。つまりそうした不特定性は、それが架空の出来事にすぎないことを表しています。しかしだからこそ、そのお話はどこでも、誰にでもあてはまる共感を得ることができるのです。 そして、おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯にでかけます。これはずいぶん昔の生活の一部のように思えますが、50〜60年ほど前まで、日本の村々ではこうした生活を続けていたのです。 しかし現代では、「山で柴を刈る」と聞いても子どもたちはおろか、お父さんお母さんでさえも「柴」(山野に生えている雑木)を「芝」と誤解してしまいそうです。(おじいさんが山のゴルフコースのお手入れに芝刈りに行くはずはないですよね !!) 現代では、柴を燃やしてかまどで煮炊きをしたり、お風呂を沸かしたりすることはなくなりました。「川で洗濯」と聞いてもその様子を想像することすら難しいのではないかと思います。 しかし、このような昔話は子どもばかりでなく、大人も一緒に楽しんできました。また昔話が日本特有なものでないことは「グリム童話」が翻訳されて、世界中で読まれていることでもわかります。この昔話を子どもたちが世代を超えて好むのも、人間の原初的な思考に共感するからなのでしょう。 昔の生活がなくなっても、昔話を聞きたい、読みたいという思いがなくなることはないのではないかと思います。もうすぐ夏休みが始まります。是非この期間中に語り聞かせや読み聞かせで昔話を子どもたちにも伝えていただきたいと思います。 最後に、桃太郎に関する問題を一つ。 桃太郎には大好きなものが四つあります。 そのうちの三つは「おこし」と「煮つけ」と「焚き火」です。ではもう一つの好きなものは何でしょうか? 真剣に考えずに(?)、子どもたちと「桃太郎」の歌でも歌いながら考えてみてください !! |
理事長 遠山 和良 |
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