せいし 幼稚園
 
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子どもたちは いま ・ ・ ・
 
『絵本の歴史
せいし通信 9月号

 夏休みが終わりました。夏休みに入る前に、佐藤先生から『絵本選びと読み聞かせ』についてのお話や、幼稚園から各学年向けに『お薦め絵本』をご紹介しました。そして夏休み期間中には、絵本の貸し出しをして、たくさんの親子にご利用いただきました。

子どもたちが大好きな絵本。日本は世界でも絵本の出版が多い国で、2006年には1847点、現在も毎年1000点を超える絵本が出版されています。 絵本の歴史は、平安時代の「絵巻物」を起源に、室町時代から江戸時代前期の絵入り彩色写本である「奈良絵本」、江戸時代の「草双紙」と歴史をたどることができます。江戸時代の草双紙は娯楽本の総称で、その中でも「赤本」と呼ばれるものは、子ども向けに作られた絵本のことです。この「赤本」の中には、桃太郎やさるかに合戦、舌切り雀、花咲か爺など、現在も子どもたちに親しまれている物語の絵本があります。その当時の絵本は、木版刷りをした和紙を二つに折って、その5枚を糸で綴じて10頁分が一冊。それが数冊で一篇の物語となっていました。明治になると、欧米の印刷技術や絵本が入ってきて、現在のような絵本の形態になりました。

 スペインにあるアルタミラ洞窟壁画。1879年に、アマチュアの考古学者であるマリセリーノ・デ・サウトゥス侯爵の12歳の娘、マリアによって偶然に発見されました。驚くことに、後にその壁画は、旧石器時代末期のものと判明したのです。アルタミラ洞窟の長さは約270m。その壁に、いまを遡ること14000~18500年の間に、繰り返し合わせて930もの壁画が描かれているのです。描かれているものは、バイソン、ウマ、シカ、イノシシなどの野生動物。壁の岩の凹凸を巧みに利用して立体感や動きのある動物が見事に表現されています。

 それを描いたのが、20万年ほど前に出現した新人類のクロマニヨン人です。人類は400万年ほど前に現われた猿人が直立歩行をして脳を拡大させて、200万年前に石器を使い始めます。そして180万年ほど前の原人(ジャワ原人が有名ですね)へと進化します。その原人は50万年前に火を使うことと言葉を獲得して、旧人類へとバトンタッチ。ネアンデルタール人に代表される旧人類は、さらに新人類であるクロマニヨン人へと進化していきました。

 このクロマニヨン人によって描かれた洞窟壁画の時代は、未だ農耕や動物の飼育は行われてはおらず、もっぱら狩猟や採集によって食物を得る生活だったようです。ちなみに農耕が行われるようになるのは約8000年前、つまりこの壁画が描かれてから数千年後ということになります。その狩猟の対象であるバイソンやイノシシなどの動物の壁画。それらの動物は吠え、走り、うずくまり、群れをなしています。彼らは、この動物を描くことによって何を表現し、何をメッセージとして残したかったのでしょうか。この時代の人類は言葉を獲得していたものの、文字はまだ発明されていませんでした。

 子どもたちが見る絵本。子どもたちも幼児期では、まだ文字が獲得されていません。絵に添えられた文字、そしてそれを大人や教師が読み聞かせすることにより、言葉とイメージ(絵などの視覚から得られた情報)が関連付けられ、言葉の意味を学習します。アルタミラの洞窟でも、15000年前にクロマニヨン人の大人たちがバイソンの絵などを示しながら、子どもたちに動物の話などをしていたのでしょうか。

 日本の絵本の起源ともいえる平安時代の絵巻物。長いものでは100mを超す絵巻物もあるそうですが、そのほとんどは約60cmごとに絵と言葉が添えられていて、それを手繰りながら絵とお話が進むように作られているそうです。いまから1000年前の平安時代でも、絵巻物を見ている親子には楽しい時間が流れ、子どもたちは、そのお話に心をときめかせながら絵巻物の世界に浸っていたに違いないのです。

 まだ残暑は厳しいものの、朝夕は少し秋の気配が感じられる頃となりました。夏休みの間に培われた読書週間や読み聞かせの習慣。これらの習慣はこれからもずっと続けていただきたいものだと思います。

 理事長   遠山 和良
 
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