たいちょうのへや |
『想像から創造へ』 |
せいし通信 1月号 |
想像力とは、現実に目の前にないものを思い浮かべ、さらにそれを具体化し、実現に向けた方向性を探ろうとする能力のことです。人は現在だけを生きているわけではありません。いつも未来に向かって、夢や希望を実現させようとしています。「こんなものがあったら」という想像と願望が、自動車を走らせ、飛行機で空を飛び、さらにロケットは宇宙へと飛び出していったのです。現在の人類の文明や文化は、人がもつ想像力を働かせて、以前にはなかったものを創り出そうとする(創造する)精神がもたらしたものなのです。 人間の思考には「収束的思考」と「拡散的思考」があります。収束的思考とは、過去に積み重ねた知識の再現で「想起」と呼ばれます。覚えたものを正確に再現する受験勉強などは、この収束的思考の例です。これに対して拡散的思考は、知識をもとに新たにイメージや言葉を思い浮かべるもの、これが「想像」で「創造」の源となるのです。 しかし日本では、この想像力の教育はあまり重要視されてきませんでした。私たちの日常においては「想像」よりも「想起」のほうが重要とみなされているからです。受験勉強は優良といわれる大学や企業に入るために必要とされ、仕事も過去の例を学んで解決されることが多いということからも、いかに想像力の教育がおろそかにされてきたのかが理解できます。 そして、いまこの想像力を源とした「創造力」の欠如が、子どもたちの「理科離れ」という現象を引き起こしています。理科教育では、子どもが自ら課題を見つけ出し、自分なりの発想や見通しをもって観察や実験に取り組みます。そして得られた結果を整理し、また分類して、その他の事象と関連づけます。それによって自然を総合的に捉える見方や考え方を育てる、という創造性の基礎を培う教育です。この理科離れは、科学技術に夢や希望を見いだし、創造的活動を志向する人材の不足にもつながります。その結果、技術立国日本の名称は、世界地図から消滅する危険性さえあるのではないかとも思えます。 幼児教育の分野でも、商業ベースに乗せられた早期知能教育(いわゆる収束的思考の教育)が盛んですが、例えば5歳までに読み書き計算を教えても、日常の子どもの生活の中での使用頻度が少ない知識であれば、教えたときは覚えていてもやがて忘れてしまい、かえって子どもの知能に負担をかける結果になります。 それでは、その源である想像力はどのようにして育まれるのでしょうか。想像する力は五感をとおしての体験や経験、また知識に基づいています。ですから、その経験が多いほど想像の世界は豊かになります。幼稚園でも5歳を過ぎて年長組になり、その教育環境を整えることにより、読み書き計算などの知識の分野は子どもたちの生活の中で自然にできるようになります。ですから、それまでは草花を見つけたり、虫を捕まえたりなどの行動の中で五感を刺激するような経験を積むこと。50の文字を覚えるよりも100の「何故だろう? 不思議だな?やってみよう」という疑問や興味や意欲を育てること。それが子どもたちの内面の育ち、つまり想像的創造力を発達させることにつながっていくのです。 創造力は、人生に悩んだり、仕事に行き詰って解答が見つからないとき、どうすれば未来が開けるのかを考える力でもあります。創造力はつらいときを乗り越える知恵でもあり、人間の生きる力そのものともいえるのです。 |
理事長 遠山 和良 |
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