せいし 幼稚園
 
 えんちょうのへや
 
 
子どもたちは いま ・ ・ ・
 
 『一番いい時代(とき)
せいし通信 春休み号

 3月15日、今年も年長組の33名の子どもたちは、一人ひとり卒園証書を受け取って、誇らしげに胸を張って幼稚園を巣立っていきました。

 人はそれぞれの人生の中で、一番輝いてすばらしかった時代があったのではないかと思います。ちなみに私は中学校時代、尊敬する先生や信頼できる色々なジャンルに興味を持った友人たちに囲まれて、最も充実した生活を送っていたように思います。しかし幼児期は、と言えば、残念なことに田舎に住んでいたこともあり、幼稚園などは当然なく、幼稚園の思い出はないのです。(もっともその頃は幼稚園に通う子どもは、ほんの一握りでしたし、幼稚園に行かなくても周りには、おりしも戦後のベビーブーマーの子どもたちが溢れかえっていた時代でした) ただ、自宅から30分程のところに保育所があり、そこに小学校入学前の半年間ほど通った記憶があります。

 人によっては、高校時代が一番充実して素晴らしかった、ある人は大学時代、小学校時代の様々な思い出や、よい時代だったと思える時期があったはずです。しかし、多くの人に聞いても、その殆んどすべての人が、幼稚園の頃が一番いい時代だったと答えることはありません。私も、その時代のことを懸命に思い出そうとしても、半年間通園した保育所で、少し大きな怪我をしたこと、大きな木の下でやさしい先生とお弁当を食べたこと、多分友だちであったであろう隣に座っていた子から、絵が下手だといわれて、それ以来絵は描かなかったことなど、自分のことを考えてみても、幼児期の記憶は断片的で、セピア色の写真のワンカットを思い出すようなもので、確固たる確信はないのです。

 このように私を含めて殆んどの人が、幼児期の記憶が断片的なこともあり、一つの時代としての連続した記憶は存在しないのではないかと思います。しかしそれだからといって、幼児期は良い時代ではなかったのでしょうか? 決してそうではないと思います。

 幼稚園の子供たちには、いつも真剣な眼差しと、旺盛な興味や意欲、行動力と感動にあふれた生活があります。大人に見られる無気力や無感動、無関心とは無縁の生活を送っています。たとえ記憶には断片的ではあっても、子どもたちのもつやわらかい感性に満ちた幼稚園時代の生活は、私は一番いい時代であるのではないかとも思います。

 一番いい時代の思い出は、水底に沈んで光を放つ砂金のように、キラキラと光を放ち続けるのでしょう。


 園長   遠山 和良
 
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