たいちょうのへや |
『使い切れない時間』 |
せいし通信 5月号 |
いまから、100年以上前の話ですが、南太平洋の島の一つ、サモアの族長がヨーロッパを旅したあと、島民に向かってこう演説したそうです。 「私たちは小さな丸い時間機械を打ち壊し、日の出から日の入りまで、ひとりの人間には使いきれないほどたくさんの時間があることを、西洋の人々に教えてやらなければならない」。 この「小さな丸い時間機械」はもちろん時計のことですが、使い切れない時間など、目まぐるしい現代社会に生きる私たちにとっては夢物語のような話です。 現在でも、子どもたちが歌いダンスをしている「南の島のハメハメハ大王」は、1976年、NHKの「みんなの歌」で放送された歌ですが、歌詞の中で、そのハメハメハ大王は、ロマンチックな王様で、風のすべてが彼の歌、星のすべてが彼の夢ですし、とてもやさしい奥さんは、朝日の後で起きてきて、夕日の前に寝てしまうというように、この歌の中では時間の経過や時間の概念そのものと無縁の生活が歌われています。 6歳頃までの子どもには時間そのものの概念がありません。ただし、幼児期の子どもにも時間的な感覚はあります。子どもたちとの会話の中でも「この前レストランでお子様ランチを食べた」「昨日すべり台で遊んだ」「こんど遊園地でメリーゴーラウンドに乗りたい」など、過去や未来を話しの中に登場させることができます。しかし、子どもには「いま」がすべてで、未来のことは全部「明日」だったり、過去のことは数日前であっても「さっき」や「昨日」というように、大まかな時間の感覚しかありません。幼稚園でも、子どもによっては時計が読めるようになる子もいますが、未来を見越して行動ができるようになることとは全く別物なのです。 時計を読むことは小学校で学びます。そして小学校では教科別に、一校時45分間単位の中で与えられた課題を習得することが求められます。つまり与えられた時間を自分の中でどのように使えばいいのかを求められるということになります。こうして子どもたちは10〜12歳になる頃には、一年先程度のことを見通せる力がついて、先のことを考えることができるようになります。 このように時間の概念には、子どもたちの発達の過程があるのですから、幼児期の子どもには、大人の感覚で時間を区切ったり、押し付けたりすることは避けなければなりません。時間の概念のない幼児期で大切なことは、それぞれの子どもの時間の流れの中で生活させてやることです。そのことは、幼児期の教育は「待つ教育」であるといわれる所以なのです。 子どもにとって「使い切れない時間」があればあるほど、子どもたちは自由な発想を巡らし、自分自身を成長させていくことができるのですから。 |
理事長 遠山 和良 |
せいし通信 バックナンバー |
平成23年度 2011年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
冬休み号 1月号 作品展特集号 2月号 3月号 春休み号 |
平成24年度 2012年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
冬休み号 1月号 2月号 3月号 春休み号 |
平成25年度 2013年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
冬休み号 1月号 2月号 3月号 春休み号 |
平成26年度 2014年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
冬休み号 1月号 2月号 3月号 |
平成27年度 2015年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
冬休み号 1月号 2月号 3月号 春休み号 |
平成28年度 2016年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
1月号 2月号 3月号 春休み号 |
平成29年度 2017年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
1月号 2月号 3月号 春休み号 |
平成30年度 2018年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
1月号 2月号 3月号 春休み号 |
令和元年度 2019年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
1月号 2月号 3月号 春休み号 |
令和2年度 2020年 |
5月号 6月号 7月号 夏休み号 9月号 10月号 11月号 12月号 |
1月号 2月号 |
seishi@kumin.ne.jp
学校法人 聖使学園 認定こども園
せいし幼稚園・せいしキディクラブ
〒830-0023 福岡県久留米市中央町30-5
TEL:0942-32-4971 FAX:0942-32-7678