えんちょうのへや |
『五月』 |
せいし通信 5月号 |
五月になりました。四月中は小さい組のあちこちで泣き声が聞こえていましたが、いまはすっかり落ち着いて幼稚園生活をエンジョイしているようです。 人間の赤ちゃんは10ヶ月の早産と言われるように、他の動物は生まれて数時間後には自力で立ち上がることができるのに対して、生まれてすぐは目も見えず、もちろん立つことも這うこともできません。それでも一年後には立って歩き出し、2年後には言葉をしゃべるようになり、3才になるとわずかながら社会性も芽生えて集団生活を送れるようになります。 「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、このように成長著しい時期であるから、その時期に知能教育や情操教育を集中して与えるべきだ、ということにはあたりません。一番大切なことは、子どもたちが自分は愛されている、必要とされている存在なんだというアイデンティティ(identity・自己同一性)につながる人間としての基礎的な部分を育ててやることです。 人はみな、行動基準や価値基準、判断基準などの自分の基準(スタンダード)をもって生活しています。その生活の基盤となる自分の基準を少しずつ創り上げていくことが、幼稚園時代のそして、幼児教育の目指すところなのです。この人間としての根幹が育つことが、実は「三つ子の魂百まで」の言葉が指すことに他なりません。 それらは、幼稚園での生活でどのようにして培われるのでしょうか。幼稚園教育要領には、幼稚園の教育の基本として、幼児期の特性(幼児期の興味や関心、発達の特性など)を踏まえ、環境をとおして行うものであること、遊びをとおしての指導を中心として、幼児期に育てるべきねらいが総合的に達成されるようにすること、が求められています。 環境とは子どもたちを取り巻く自然や人的、物的すべての要件です。そして望ましい環境とは、教師が子どもに獲得して欲しい能力(自然や社会的な事象に興味や関心をもつこと、様々な気づきや発見など)が育つよう意図的、計画的に構成された環境のことです。子どもたちはこれらの環境に好奇心や探究心を持ってかかわり、自分の生活や遊びに取り入れていくことをとおして成長発達していくのです。そして子どもたちが自らの手で獲得していった知識や経験が積み重なって自分自身の価値、行動、判断などの基準が徐々に創り上げられていきます。 冒頭で子どもたちも幼稚園生活をエンジョイし始めていると記述しましたが、同時に子どもたちには葛藤も生まれます。遊びたいオモチャがあるのに、何故か友だちと分け合わなければならないこと。先生と話をしたいのに、いつも一人占めはできないこと。一番にしたいのに順番があること。何故か自分の思いどおりにならない友だちがいること。 こんなはずじゃなかった。子どもたちにも悩みはあるのです。という訳で子どもたちは疲れて帰ります。でも家には、とびきり笑顔のやさしいお母さんとおいしいおやつが待っていることでしょう。そのパワーを充電して子どもたちは明日の幼稚園生活にまた期待をもって臨むのです。 |
園長 遠山 和良 |
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