たいちょうのへや |
『三つ子の魂百まで』 |
せいし通信 5月号 |
「三つ子の魂百まで」とは、3歳頃までに受けた教育は100歳になっても変わらない、という意味のことわざです。ここでいう三つ子とは、幼い頃という意味なのですが、3歳までの教育でその後の人生が変わると解釈されたり、さらに脳科学の分野で人間の脳の80%は3歳までに完成するとされたことで、それに便乗した知能教育を謳う商品も多く見られます。またそれを幼児教育の分野に取り入れて、幼稚園の教育の特色としてアピールされてもいます。 世間を騒がせている大阪のある幼稚園では、教育勅語を子どもたちに暗唱させ、それを教育の成果としていたようです。大人でさえ難解な、あの教育勅語を暗唱する子どもたちの能力は素晴らしいという評価なのでしょうが、子どもたちは教育勅語の全文を、単に言葉の羅列としてリズムとピッチ(抑揚)で覚え込んだにすぎません。 勿論、教育勅語自体が悪いといっているわけではありません。あの「朕惟フニ ‥(私が思うには‥」で始まる教育勅語(正式には「教育ニ関スル勅語」)は、明治天皇の勅語として、明治23年に発令されました。内容は「国民は忠義と孝行を尽くし、国民が心を一つにして世々にわたって立派な行いをしてきたことは、わが国の優れたところであり教育の根源もそこにあります。父母に孝行し、兄弟仲よく、夫婦睦まじく、友を信じ、博愛の手を差し伸べ、学問を修め、すすんで公共の利益に力を尽くし、憲法を重んじて従いなさい」 ‥後略‥ この教育勅語は、戦後昭和23年に排除され、代わって現在の教育基本法が制定されました。この教育勅語を暗唱することが教育の成果などというのは、大人の自己満足に過ぎません。幼児教育を大人の自己満足で終わらせてはならないのです。 幼稚園教育要領にも「幼児期は、自分の生活を離れて知識や技能を一方向的に教えられて身に付けていく時期ではなく、生活に中で自分の興味や欲求に基づいた直接的、具体的な体験を通して、人格形成の基礎となる豊かな心情、物事に自分からかかわろうとする意欲や健全な生活を営むために必要な態度などが培われる時期である」と明言されています。 そして「幼稚園の教育は環境を通して行なうものであることを基本とする」とも規定されています。この環境とは人的・物的両面の環境であり、前段の物事に自分からかかわろうとする意欲の対象となるものです。 子どもたちの幼稚園での先生や友だちとの出会い、そして初めて取り組む活動(勿論、これらはこんな子どもたちに育って欲しいという意図のもとに、教師によって創られた活動や環境です)、これらの出会いや活動は、子どもたちの経験や知識として蓄積されていきます。そしてそれは、子どもたちの次の生活や活動への思考や判断や行動の基準となっていくのです。ですから子どもたちには人的・物的な環境としてできるだけ善いもの、美しいもの、本物が用意されなければなりません。 「三つ子の魂百まで」とは、子どもたちが初めて出会い体験したもの、それがその子の価値・判断基準となり、それは大人になっても続いていく、と解釈してもよいのかも知れません。 5月は小さなコンサートを予定しています。ピアニストの片岡先生の美しいピアノの響きは、子どもたちの耳にどのように届くのでしょうか。 |
理事長 遠山 和良 |
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