えんちょうのへや |
『春は あけぼの』 |
せいし通信 3月号 |
「春は曙 やうやう白くなりゆく山際すこしあかりて 紫だちたる雲の細くたなびきたる」 この文章で始まる『枕草子』は、平安時代に生きた清少納言の随筆集の1段目です。全323段に及ぶこの随筆集の1段目は、春は曙に続いて、夏は夜(が良い)、秋は夕暮れ(が良い)、冬はつとめて(早朝が良い)と続きます。この冒頭の「春はあけぼの
‥」を現代の女性風に綴ると「春は夜明けの頃がいいよね。少しずつスカイラインが浮かび上がってきて空が明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいているのが素敵ね」とでもなるのでしょうか。 日本には四季折々の風景や風情があり、そしてそれを愛でる心があることが改めて感じられます。 清少納言の生没年は明らかではありませんが、966年頃~1025年頃といわれています。ちょうど同じ時代に生きた『源氏物語』の紫式部。その紫式部の『紫日記』の中では、清少納言を評して「清少納言こそ したり顔にいみじうはべりける人 さばかりさかしだち真名書き散らしてはべるほども よく見ればまだいと足らぬこと多かり」と書いています。これを再び現代女性風に綴ると「清少納言は、得意顔で偉そう。教養をひけらかして感じ悪いよね。漢字(女性はこの頃漢字を使っていなかった)なんか使っているけど、よく読むと間違いも書いているしね」と記しているのです。この二人には面識があったという記録はありませんので、対抗意識からきた一方的な清少納言への悪口だったのでしょうか。いまも昔も、どうも女性の心理はよく理解できません。 2月19日は、二十四節気の一つの「雨水」でした。雪から雨へと変わり水もぬるむ季節とされています。また「三寒四温」の言葉の通り、寒い日と暖かい日が交互に現れながら、季節は春へと移り変わっていきます。「春は曙」、温かくなってきた春の夜明け。その曙の頃を「いとをかし(趣が深い)」とする清少納言の心情は、やはり日本人なら、昔もいまも共感できる共通の心情ではないかとも思います。 2月の作品展では、子どもたちのこの1年間の成長を様々な描画や造形活動をとおしてご覧いただきました。年少組初期のなぐり描きや紙の二ツ折などの造形からスタートして、年長組の圧巻のコンテによる協力画や土粘土による協同制作、描画の数々。そして3階ホールいっぱいに広がった紙による造形の「カウボーイの世界」まで、幼稚園で過ごす3年間の子どもたちの成長の姿を実感していただけたのではないかと思います。そして、それであるからこそ、私たち幼児教育に携わる者は、この心身共に成長し「善くなろう」としている子どもたちに「何をしてやれるのか」を常に考え模索していかなければならないのです。 その子どもたちも、それぞれ卒園、進級の月を迎えました。小学校で、そしてそれぞれ進級した年中組、年長組で、子どもたちはどのような成長を見せてくれるのかとても楽しみです。 |
園長 遠山 和良 |
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