せいし 幼稚園
 
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子どもたちは いま ・ ・ ・
 
 『赤ちゃんと母親の関係』
せいし通信 10月号

 高気圧が移動性となって、秋の涼しい空気を大陸から運んできて、朝夕は肌寒さを感じる季節になりました。

 赤ちゃんと母親の関係は、半世紀前の「おんぶ」と「乳母車」の関係から「だっこ」と「ベビーカー」の関係にすっかり変わってしまいました。この数年間、若いお母さんが赤ちゃんをおんぶしている姿を見た記憶はないのです。もっとも、おばあちゃんであろう方が、赤ちゃんをおんぶしている光景は時おり見かけますが ……。

 ところで「だっこ」については、アメリカでの調査によると、母親の80%は赤ちゃんを左腕で支え、自分の左胸に密着して「だっこ」をしているのだそうです。なぜ左腕で支えて「だっこ」しているのかについては、母親が利き腕でないほうの腕で支え、利き腕の右手ををフリーにしているのではないか、という考え方がありますが、左利きの母親でも、やはり80%近くが赤ちゃんを左腕で抱いているそうで、この考え方は否定されます。

 次の考え方は、心臓が体の左側にあるからではないか、という説です。赤ちゃんは、母親のおなかにいるとき、その心音を聞いて心を安定させていた。そして生まれてからも赤ちゃんはそれを求め、母親の心音が聞こえる左側に抱かれることを好み、母親も無意識に赤ちゃんの要請に従っているのではないか、という説です この説はかなり有力で、実験でも赤ちゃんを寝付かせる条件に、何も聞かせない、子守唄を聞かせる、心音が聞こえる、などのグループに分けたところ、「心音」のグループは、他のグループの半分の時間で寝付いてしまったというのです。 

 また、これは誰が調査したのでしょうか。過去数百年に描かれた、幼いキリストを抱いた聖母マリアの絵を500点ほど調査をしたところ、その中の約400点、つまり80%がキリストを左胸に抱いていたそうです。

 ところが近年になって新しい説が登場しました。その説は脳との関係から、赤ちゃんは左胸に抱かれることを好み、またそれは母親にとっても好ましいことだというのです。赤ちゃんが左腕に抱かれている状態では、赤ちゃんは母親に対して左耳を向けていることになります。この左耳に入った音声は、主に感情をつかさどる右脳で情報処理されます。一方、左脳は言語などの情報処理をしていますが、赤ちゃんはまだ言葉の意味を理解することができません。

 母親の心理状態などの感情面の理解ならある程度可能な赤ちゃんにとって、左耳を母親に向けて感情をつかさどる右脳に感情刺激を送ることは大変重要なのです。そしてこのときは、赤ちゃんだけではなく、母親も赤ちゃんに対して左耳を向けることになり、母親にとっても自分の意図するところを赤ちゃんに伝えるためには、そのほうが都合がよいという関係が生まれます。

 こうしてみると、この「脳に注目した説」は、赤ちゃんの感情の動き(脳の働き)、つまり感性を育むのには、とても有効な手段ではないかと思えます。その感性は、幼児期にはさらに豊かに育てられなければなりませんし、その感性によって知性をもはぐくむという、この時期の子どもたちにとって重要な意味をもちます。

 さて、この「心音説」と「脳に注目した説」、この二つの仮説をご自分で検証してみるために、もうひとり赤ちゃんはいかがでしょうか?。

 園長   遠山 和良
 
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