今年は、５月中旬には早々と梅雨入りして、雨模様のすっきりしない日が続いています。梅雨入りが早かった分だけ、梅雨明けも早くなって、子どもたちには夏の青空の下で思い切り戸外遊びを楽しんでもらいたいものです。

　梅雨が明けると子どもたちの人気者、セミが鳴き始めます。セミは不思議な生き物です。日本には、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシなど30種ほどのセミがいます。セミはその一生の殆んどを地面の下で過ごしています。６〜７年もの間、地中でじっと木の根にとりついて、わずかな養分を含む水分を吸いながら羽化する日を待っています。地中で何回か脱皮して大きくなった幼虫は、夏のある日地上に這い出て羽化し、セミの姿になります。そしてセミの大合唱。それはオスがメスに「ここにいるよ〜」と知らせる愛の賛歌（？）です。そしてオスはメスと出会い交尾をすると死んでしまい、メスも木に卵を産みつけるとやはり死んでしまいます。それはセミが地上に出てきて2週間ほどの間のことです。

　ところがアメリカには、6〜7年どころか、13年、17年の地中生活を送ったうえで、一斉に大発生するセミがいます。1634年、北米東海岸に入植したヨーロッパ人は驚きの光景を目にしました。赤い目をした何百万匹の昆虫が地面から一斉に湧きあがったのです。入植してきた清教徒たちは、これを「イナゴ」と呼びました。旧約聖書に書かれている災いの一つ、イナゴの大群と思いこんだのです。しかし実は、この昆虫はイナゴではなく「セミ」でした。これが13年毎、17年毎に大量発生するセミに関する最初の記録となりました。このセミは英名でperiodicai cikadas（周期セミ）と名付けられていて、アメリカだけに生息しています。

　先日新聞に「アメリカの東部で、１７年ごとに大量に発生する「１７年セミ」の羽化が始まった。予測される数は、6月末までに最大で数兆匹」という記事が掲載されていました。一斉に羽化を始めたのは、３種類の１７年セミで「ブルード�]（テン）」とよばれている集団です。１７年前の2004年には「ワシントンで１７年ぶりにセミが大発生」「シンシナティに５０億匹のセミが現れる」などと報道されていました。そして、このセミはなぜか１?にも満たない狭い所に集中して現れ、その数４０万匹。６畳の部屋に例えれば、その中に４００匹のセミがいて鳴いている計算になります。その騒音たるやジェット機のエンジン音にも匹敵する大きさだといいますから、とんでもない大きさで、セミの鳴き声の中にいると会話ができないことはもちろん、３０分もその中にいれば、その後数時間は耳が聴こえない状態が続くほどだといわれています。

　この６月末までに、最大で数兆匹といわれる羽化が始まった「１７年セミ」。周期的に大量に発生する理由については、鳥などの天敵に食い尽くされるのを防ぐため、オスとメスの出会いが増えて、子孫を残す可能性を高めるためなどが考えられています。また発生周期が１３年、１７年の素数であることもポイントで、互いの周期の同時発生が起きるのは２２１年に一度であること。また素数であることで、他の年数の同期で発生するセミの出現とも重なる確率が低くなり、別の種類との交雑を避け易くするためとみられています。

　このアメリカにしか出現しない不思議な周期セミ。まだ６月一杯は羽化が続くようなので、子どもたちとも、このセミについてお話してみませんか。