せいし 幼稚園
 
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子どもたちは いま ・ ・ ・
 
 『曼珠沙華(ひがんばな)』 
せいし通信 10月号

 秋の彼岸の頃になると、どこからともなく姿を現わす真紅のヒガンバナ。

別名マンジュシャゲとも言い、私の子どもの頃は、どういうわけか田んぼの畦や墓地に多く咲いていて、毒々しい花の色や、葉もないのに突然茎が立ち上がって花が咲くこともあって、何となく気味が悪いものでした。地方によっては、シビトバナ、ヤクビョウバナとも呼ばれ、嫌われて刈り取られてしまい、いっそう墓地などに限られた花であったようです。

 そのヒガンバナも、現在では棚田や川原の堤防に植えられて、鑑賞の対象にもなっています。また以前は赤い色がヒガンバナの代名詞でしたが、今では白や黄色やピンクのヒガンバナも見られるようになりました。

 この植物は全草にリコリンや、その他数種の毒物成分を含み、食べると嘔吐や腹痛を起こし、多食すると死に至ることもあるそうです。毒の多いユリ根のような鱗茎を多量に食べない限りそんな心配はありませんので、あまり神経質になることもないと思いますが、すぐ口にもっていく子どもたちには、触れさせないほうが無難かも知れません

 昔このヒガンバナが田んぼの畦や墓地に多くみられたのは、どうも訳があったようで、その目的はネズミ、モグラ、虫など田を荒らす動物が、その鱗茎の毒を嫌って避けるように、墓地の場合は虫除け、また昔は土葬していたので死体が動物によって掘り荒されるのを防ぐためとされています。そしてこの鱗茎は、ユリ根と同様にデンプンに富んでいるので、水溶性である有毒成分リコリンを長時間水にさらして除去し、第二次世界大戦中などの戦時や非常時に食用とされたこともあるそうです。

 まだ夏の名残の強い陽光の中に真紅に燃え立つヒガンバナ。子どもの頃の心に、青空と真紅の花のコントラストが、ある種の不安感を伴って強く残っていたことを覚えています。

 

水郷柳川が生んだ詩人、北原白秋も『曼珠沙華(ひがんばな)』という詩を残しています。

  ゴンシャン ゴンシャンどこへ行く 赤いお墓の曼珠沙華 

今日も手折りにきたわいな

ゴンシャンゴンシャン何本か 地には七本 血のように

ちょうどあの児の 歳の数

  ゴンシャン ゴンシャン気をつけな 

一つ摘んでも日は真昼

  ゴンシャン ゴンシャンなし泣くろ

 いつまで取っても 曼珠沙華 曼珠沙華

恐や赤しやまだ七つ            ※ゴンシャン(良家の娘)

 良家の子女である母親が七歳の子どもを失い泣き崩れている。あるいは良家の子女が人知れず妊娠し、人知れず堕胎し発狂して七年経ってもさまよっているという説があるようです。この詩は山田耕作によって作曲され、名曲として知られています。

 園長   遠山 和良
 
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