えんちょうのへや |
『今は昔』 |
せいし通信 1月号 |
あけましておめでとうございます。 昨年の暮れに、新年はやはり少しさっぱりして迎えようかなと思って床屋に行きました。年末は混んでいるのかなと思いきや、意外と客は少なく、それほど待たされずにさっぱりとした頭になって帰ったことでした。昔は床屋や美容室は、年末は深夜まで営業しなければ客を捌ききれないほど混んでいて、それこそ日本中の老若男女がこぞってさっぱりとした頭で新年を迎えていたものでした。現代では、正月はさほど格別な意味もなく、少し特別な休日という程度の認識なのでしょうか。 私が、このせいし幼稚園に勤務して32年が経ちました。そしてこの32年間に社会情勢や子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しました。その中でもいちばんの大きな変化は、情報化社会が進んだことでしょうか。世界中の情報がリアルタイムで伝達されるようになり、車に搭載されたGPSによるカーナビゲーションシステムは、目的地をセットさえすれば、その目的地まで車を誘導してくれます。自分の目や行動で確認しなくても生活ができ、その生活自体のクオリティもあがって、より安楽で上質な生活が送れるようになりました。 より安楽で便利な生活といえば、現代は家電製品や携帯電話などの進歩や普及など枚挙に暇がありません。50年前の生活では、家庭にやっと炊飯器や冷蔵庫、洗濯機などの家電製品や家庭用電話器が普及し始め、1960年代の半ばからは、車(Car)、クーラー(Cooler)、カラーテレビ(Color TV)の頭文字を取って3Cと呼ばれて、それが三種の神器としてもてはやされていました。 そのほんの10年前の1950年代になると、家電製品はおろか、家庭用の電話さえ普及していないのが現状でした。一般の家庭で家電製品といえば、せいぜいラジオと電気コンロ程度、家電製品といえるほどのものでもありませんでした。この50年間に人の生活は激変したと言っても過言ではありません。 しかしその反面、人間関係の希薄さや直接体験の機会の減少といった事象が浮上しています。例えば携帯電話やパソコンの普及で、相手と直接会わなくても電話やメールなどで要件をすませることができ、またインターネットを利用すれば、調べ物や商品の情報は瞬時に手に入り、買い物やその支払いもネット上で出来るので、極端にいえば一歩も部屋から出ることもなく生活することが可能なのです。自分のことを例にとっても、百科事典(すでに死語?)なんぞは、とうの昔に本棚の肥しとなり、辞書自体を引く機会も減りました。用件もメールのやり取りですますことが多くなったことなどです。 より便利で安楽な生活。身体が不自由な方や高齢者にとっては住みやすい時代なのかもしれません。しかし一方では高齢者の孤独死などが社会問題として報道されています。 しかし最大の問題は、幼児に与える影響についてなんら論じられることがない点です。幼児期は、自分で見たり聞いたり、触ったりなど五感をとおした直接体験で自分の経験や知識を蓄積して、それを基準にして次の考えや行動を決定し、更に情報を蓄えていく。この繰り返しで自らを成長させていく必要があります。この幼児期の特性を無視した現在の社会のありように私は危惧を覚えます。 せめて、せいし幼稚園の子どもたちは、豊かな直接体験に満ちた、充実した幼児期を過ごして欲しいと思います。
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園長 遠山 和良 |
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