えんちょうのへや |
『幼稚園の教育と造形活動』 |
せいし通信 2月号 |
2月3日(日)は、毎年恒例の『作品展』。子どもたちは、土粘土をこねたり、紙を切ったり貼ったり、思い思いの作品がその手で作り出されています。 幼稚園の教育は、幼児期の特性を踏まえ環境を通して行なうものであることを基本として、その教育環境により、幼児の主体的な活動を促すこと。幼児期の自発的な活動としての『遊び』、指導はこの『遊び』を通してのものであることが、幼稚園教育要領の総則に示されています。幼稚園の教育は、小学校以上の教科別の系統的な学習とは異なり、教育の効果が見えにくい側面があります。しかし、だからといって目に見える教育効果をねらって、いわゆる知的教育教材などを使った教育が取り入れられることが子どもたちにとってよいことなのでしょうか。幼児期は、人間としての根幹、基礎的な部分を育てることに尽きるのです。 幼稚園教育要領には、領域という目標群があります。『健康』(心身の健康に関する領域)、『人間関係』(人とのかかわりに関する領域)、『環境』(身近な環境に関する領域)、『言葉』(ことばの獲得に関する領域)、『表現』(感性と表現に関する領域)の五つの領域です。この領域と言う考え方は、小学校以上の教科とは性格を異にしています。幼児の生活経験は、いくつかの領域にまたがり交錯して表れますので、領域別に目標を達成させようとする指導方法は誤っています。 今回の作品展は、狭義の意味では「感じたことや考えたことを様々な方法で表現しようとする」「色々な素材に親しみ工夫して遊ぶ」という表現の領域に分類される活動の集大成といえるかもしれません。しかし、子どもたちの経験や活動の過程を見れば、それは他の領域、人間関係や環境や言葉などの領域が包含された活動であることが理解して頂けるものと思います。 『物を作る』という行為は、現生人類を表す、学名ホモ・サピエンス(知性人、理性人)、また、ホモ・ファーベル(作る人)とも規定されている人類の根源的な行為の一つです。物を作るということは、自分の思いや、興味、意欲を形に表すことです。もちろん形に表したくても、実際に見たり、聞いたり、触れたりする直接体験や技術的な積み重ねがなくては上手くいきません。直接体験、また技術的な積み重ねとは、子どもたちの遊びの中で培われたもの、それは泥んこ遊びや砂遊び、殴り描きから始まる描画活動、折り紙や積み木遊び、そして平面から立体を起こしていく紙工作などの活動。これらの遊びや、教師などによって伝達される基礎的な技術の習得などです。 そして、それらはすべて子どもたちの知的好奇心を刺激し、子どもは自分の好奇心を満足させるために取り組んだ活動といえます。そこで子どもたちに求められるものは、計画性や集中力、判断力など、さらに年長組になると協同製作の作品などには、協調性や社会性など。 その結果、子どもたちが夢中になって取り組んだこの造形的な活動により生み出された作品とともに、私たちの意図した望ましい子どもの発達の姿が果実となって現れます。 幼児期の教育は、子どものもつ感性を刺激して、子どもの興味や関心を喚起し、それを行動や活動に結びつけること。その行動や活動の結果が教育課程、また指導計画に示された子どもの成長や発達の姿となること。これが本来の幼児教育の在り方なのです。 現代の子どもたちは、自らの手足や体などを使う直接体験の機会が著しく減少しています。この直接体験の機会が増えるほど、子どもたちはその蓄えた体験を通して、自らの価値観や判断の基準とすることができ、さらにその基準をもとに思考や行動を組み立て、決定することが出来るようになるのです。
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園長 遠山 和良 |
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