えんちょうのへや |
『夏休みの過ごし方』 |
せいし通信 夏休み号 |
長い夏休みが始まります。 私の子どもの頃の夏休みの出発は、朝のラジオ体操からでした。近所のお宮の境内に、子ども会の世話係の大人と子どもたちが集まってラジオ体操が始まります。それが終わると出席のハンコをもらって、家へ帰った頃には朝食ができていて ‥‥。 そのラジオ体操出席のハンコは、夏休みの間に沢山たまると、鉛筆やノートなどの賞品が貰えます。 そんな具合に夏休みの毎朝がスタートしていったのです。
朝の涼しいうちに宿題や勉強は済ませて、後は日がな一日、暗くなるまで戸外で遊び呆ける。この繰り返しが子どもたちの夏休みの普段の光景でした。その頃の子どもの遊びといえば男の子はセミ取りや魚つり、メンコやビー玉遊び、チャンバラごっこや陣とりなど。女の子は、ゴムとびや石けり、おはじきなど。当時の男の子と女の子の遊びは、かなり明確に色分けされていました。
まだ物がさほど豊かではなかった時代でしたから、セミ捕り用のアミなどもなかなか買ってもらえません。そこで子どもたちは、針金で直径20cmほどの輪を作り、それを竹の先にくくりつけて固定し、それにクモの巣の糸を巻き取ってセミをくっつけて捕るのです。成功率は低いものでしたが、クモの巣にも粘着性が高いものや低いものがあり、さらに新しいクモの巣ほど糸の粘着力が強いのです。その見分け方を知っていた近所の小学校高学年のお兄ちゃんは、魚つりの竿の作り方や魚つりも得意で、子どもたちの尊敬を一身に集めていました。 また女の子の石けり遊びの石も、吟味され使い込まれた自分専用の石を宝物のように持ち歩いていたものでした。このように、この時代の子どもたちは遊ぶための道具や材料を自分たちで探したり、作り出したりして遊んでいたのです。
現代では、例えばムラサキカタバミやオオバコ、杉の実を使って作るスギデッポウなどの植物を使った子どもの遊び、紙で作って遊ぶ紙デッポウや風グルマなど、作り方や遊び方を知っている子どもに出会うことはまずありません。このことは現在の両親の世代が子どもの頃の昭和50年代には、すでにファミコンなどが全盛の時代であり、ゲームやおもちゃなどが豊富に用意されていて、いわゆる昔遊びの類の経験がなかったこと。それにより、この伝統的な子どもの遊びが子どもたちに伝わらなかったことがうかがえます。
自分で遊びの道具を探したり作ったりして遊ぶ。この『遊ぶ』という目的のために道具を探したり作ったりすること。この遊びに至るまでの過程には、幼児期や学童期に習得すべき生活能力、つまり計画性や判断力、創造性や想像力を働かせることなど、これらが豊富に含まれているのです。 現代の物の豊富さや安楽さや快適性からいえば、比べようもないほどの、物がそれほど豊かではなかった時代、その時代のほうが実は子どもたちにとっては住みやすく、育ちやすい環境が用意されていたように思います。
この夏休みはよい機会です。安直なレジャー施設で過ごすだけではなく、自然の環境の中で過ごす機会もぜひ加えていただきたいと思います。子どもたちに目先の楽しさだけではなく、自然の中での発見や驚きや感動をたくさん味わわせてほしいのです。
そしてそこには子どもたちの、その心の動きに寄り添い共感してくれる大好きなお父さんやお母さんがいてくれたら、子どもたちのもつ感性や知性は寄り磨かれ、より豊かに大きく育つのです。
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園長 遠山 和良 |
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