「赤ちゃんの名前」は、両親からのいちばん最初のプレゼントといわれています。赤ちゃんの名前は、出生届を提出する生後14日までには決めておく必要がありますが、日本の伝統では「お七夜」という命名式までに名前を付ける習慣があります。「お七夜」は、子どもが生まれて7日目の夜に、家族や親せきを招いてお祝いする日です。「命名式」とも呼ばれて、命名書に赤ちゃんの名前を書いて神棚や床の間に飾ることもあります。

子どもの名前に使用できる漢字は、常用漢字表の2136文字と人名漢字表の985文字の計3121文字です。その3121の文字や組み合わせで2020年に誕生した赤ちゃんに付けられた名前。その名前で多かったものは、男の子で、�@蒼（そう） �A樹（いつき）　�B蓮（れん）�C陽翔（はると）　�D律（りつ）、女の子は、�@陽(ひな）　�A凛（りん）　�B詩（うた）　�C結菜（ゆな）　�D結愛（ゆあ）の順でした。

　現在の「苗字」と「名前」の制度は、明治４年の布告によるものです。名前の付け方は、その時代の背景や流行があって、明治から大正に元号が改められた時には、男の子は「正一」そして女の子は「千代」の名前が多くみられました。昭和に改元された時には、男の子は「昭二」（昭和元年は年末の一週間しかなかったので昭一が少なかった？）、女の子は「和子」など。

　女の子の名前は、明治末期から昭和３０年代半ばころまで、もとは上流階級のものだった命名用接尾語の「子」と、貞節、信義、忠孝、正義、博愛などの道徳を分類した「徳目」から一字を持ってきて合わせる「貞子」「信子」「正子」などの命名が定法でした。　しかし、昭和４０年代に入ると女の子の名前から子離れ（？）が進みました。ちなみに現在せいしに在籍している女の子６３名中、名前に「子」が付くのは３名だけです。

　実は２１年前の2000年にも、この巻頭言で「子どもの名前」が登場しているのですが、当時の子どもの名前で多かったものは、男の子が�@大輝、�A拓海、�B海斗、�C大輔、�D陸で、女の子が�@未来、�A萌、�B美咲、�C亜実、�D里菜でした。20年前の命名にもその傾向が見て取れますが、名前の漢字のもつ意味や、その時代背景が影響している命名ではなく、言葉の語感や響き、歯切れのよい音に漢字を当てはめて命名する方法がより顕著になっているように感じます。

　名前は、単に個人を識別する符号という訳ではなく、両親の子どもに対する思いや期待が込められています。幼稚園時代の子どもたちは、家庭でも幼稚園でも名前で呼ばれていますので、子どもたち同士でも○○ちゃん、○○くんと名前で呼び合っています。それが小学校に進学すると、女の子は鈴木さん、男の子は田中君などと姓で呼ばれるようになり、どこかよそよそしい感じもします。もっとも親しい友だち同士では、相変わらずお互いの名前で呼び合っているようです。　外国では、より近しい間柄になると、大人でもお互いをファーストネームで呼び合います。ファーストネームで呼び合うことは友情や信頼の証しともいえます。子どもたちには、このファーストネームで呼び合える友だちを沢山もち続けて欲しいものだと思います。

　名前といえば、2019年に最も多かったペットの名前は、犬が「ココ」「マロン」「モカ」、猫が「レオ」「キナコ」「ムギ」の順だったそうです。　う〜む!? 名前だけ聞くと、私はイヌやネコではなく、飲み物や食べ物を連想してしまいます。私の小さかった頃、犬はそれこそ昔物語にも出てくる「ポチ」や「タロ」「ジロ」、猫は「タマ」や「ミー」など ‥‥。　これもまた、その時々の時代を表していて面白いものだと思います。