えんちょうのへや |
『お雑煮』 |
せいし通信 1月号 |
この「雑煮」という言葉は、室町時代に書かれた「鈴鹿家記」に初めて登場します。元来武家社会における料理で、餅、野菜、乾燥食品などを一緒に煮込んだ野戦料理だったとする説があります。そして、この料理が次第に武家社会において儀礼化していき、やがて一般庶民に普及していったとされています。 また、このお雑煮には、各地方、各家庭で色々な種類があるようです。我が家では、カツオ、昆布出汁に椎茸、鶏、青味に焼餅と誠にシンプルな雑煮なのですが、日本各地には、具沢山の雑煮や味噌仕立てのもの、はたまた餡(あん)入り餅の雑煮など、地方によって特色のある様々な雑煮が存在します。 三学期が始まったこの時期は、子どもたちが一年間の幼稚園生活の中でも、一番安定して活動ができる時期なのですが、以前と比較すると、この時期になっても子どもたちの遊びの集団が小さかったり、集団が形成されにくいように見えるのが気になります。世の中の動きの中で、遊びの質が「個」が中心になってきた事も関係しているのでしょうが、幼児期には、皆で遊ぶ楽しさをもっと経験しておく必要があります。 もちろん、皆で遊ぶ中では様々なルールがあり、皆と調和させるためには我慢をしたり、思いのすれ違いがあったり、感情がぶつかり合ったりします。しかし、それは皆で遊びを完成させ、遊ぶ楽しさを得るために必要な事なのだ、とやがて理解していくのです。 元来、幼児期の子どもたちは、皆と同じ事をするのを好む時期です。ですから、12月の子どもの発表会、例えば年長組のオペレッタを見ても、子どもたちのあの生き生きとした表現は、皆で声を合わせて歌う楽しさ、踊り、演技する楽しさが溢れていたからなのです。子どもたちは理屈抜きにして「みんなで同じことをやること自体が楽しい」し、そのような経験をとおして、その向こう側にある、一つのものに向かって皆の力を合わせてやり遂げた時の嬉しさや充実感を知っているのです。 世間では、色々なゲームやアニメが大人気だったり(妖怪ウォッチの人気、幼稚園でもすごかったです)、夏には海へ、冬には山やスキーへといっせいに繰り出していますが、これは視点を変えれば、みんなの中に自分も置いておきたい、他人には干渉されたくないが仲間はずれはいやだ、と言っているのに過ぎないような気がします。また色々なサークル活動も活発ですが、それでさえ「自分の目的を達成するためにみんなで一緒にやる」ものが多いような気がします。そこに現代の人間関係の希薄さや未成熟を感じるのは何故なのでしょうか?。 「みんなで同じ事をやること、そのこと自体が楽しい」子どもたちには、このことを忘れずに成長して欲しいと思います。みんなで一つのものを作り上げていく楽しさ、必要性。これは国家にとっても人類にとっても大切なことだと思いませんか? それぞれの地方や家庭で、種類や味は千差万別でも、それぞれの素材が協力し、調和してできたお雑煮には、格別の味わいがあったのではないでしょうか? |
園長 遠山 和良 |
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