たいちょうのへや |
『真似る』 |
せいし通信 3月号 |
子どもたちは、よく親や教師の真似をします。また絵本やテレビなどの主人公になりきって遊んでいる時、これもその主人公を真似ているということになります。部屋の片隅の遊びのコーナーにエプロンがあれば、女の子はそれを付けたとたん「ああ忙しい、あなたたちは早く出したおもちゃを片付けなさい」といつも自分がいわれていることを母親を真似ていいます。男の子はブロックで剣と思しき物を作っていると、いつの間にか戦隊物のヒーローの顔になってポーズをとります。 「真似る」という言葉は「猿真似」という言葉に代表されるように、あまり良いイメージはありません。しかし子どもたちにとって、それは人間や動物に限らず、真似ることは生活していく力を学ぶことに他なりません。実は「学ぶ」は「まねぶ(学ぶ)」と同源で「まねる(真似る)」とも同じ語源なのです。 この「真似る」を出発点とした考えかたがあります。それは「守・破・離」という言葉で表されます。この言葉は、室町時代に能楽を確立した世阿弥の教えとされていますが、諸説があり定かではありません。 「守・破・離」とは、剣道や茶道などの修行における段階を示したもので、「守」は師や流派の教え、型、技を守り身につける段階。「破」は他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れて心技を発展させる段階。「離」は一つの流派や師から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。とされています。 また、これをこの言葉を現代の個人のスキル(作業遂行能力)のレベルで表すと、守:支援のもとに作業を遂行できる、また自立的に遂行できるようになる。破:作業を分析、改善できる。離:新たな知識、技術を開発することができる、と表わすことができます。 子どもたちは生活の智恵を大人(教師)から学びます。学ぶための知識欲の旺盛なことは驚くほどです。毎日の生活の中で目に入るもの、触れるもの、聞くもの、子どもたちにとってはすべて新鮮な体験です。そこで大人に対して「なぜ?」「どうして?」攻勢が始まります。子どもたちのこのなぜ、どうして、に私たち大人は真剣に向き合わなければなりません。何故なら、そこで得られた子どもたちの知識や経験は、すべて子どもたちに蓄積されて、子どもたちの次の判断や行動の基準になるからです。「真似る」も同じように真似られる大人は、すべて子どもの教師となり得ることを考えなければなりません。 世阿弥が提唱したといわれる「守・破・離」の思想。これは大人に限らず子どもの世界にも見られます。守:大人や教師の教えや言動を守り真似る。破:他の大人や友だちの自分とは違うやり方や考え方と出会って、葛藤する中にも新しいものを模索する。離:自分にあった考え方ややり方を創造することができるようになる。という段階です。 このことは、まさに幼稚園が目指している子どもたちの成長の姿の一つでもあります。教師の指示で行動したり作業をするだけではなく自分で考え行動する、いわゆる自律した子ども。そして1月号の巻頭言でも書いていた創造する子どもです。 2月の作品展では、子どもたちの夢や希望や憧れが、子どもたちの絵画造形活動の結果、作品として見事に形に表されていました。そこには確かに子どもたちがクリエーター(創造する人)として成長している証が形となって表れていたのです。 |
理事長 遠山 和良 |
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