えんちょうのへや |
『紙で遊ぶ』 |
せいし通信 10月号 |
紙は、ちぎる、破る、丸める、折る、切る、張り合わせる、曲げる、しぼるなどが容易にでき、また、のり、ホチキス、接着テープなどで補助しながら接着することができるので、子どもたちの造形遊びの材料として欠かすことができません。 印象派の画家セザンヌは、自然と物、すべての形は、球体と立方体と円筒と円錐に帰するものであると提唱し、その後の美術が形体の単純化に向かいました。その基本的な形の円形、三角形、四角形という平面幾何学的な形は、その立体を平面化した抽象形ということができます。つまり円は球体、三角は三角錐、四角錐、円錐などの投影面、四角は、立方体、四角柱などの多面柱の投影面です。自然の具象的な形態は、この基本形体の総合であり変化形体ということができるのです。 さて、この丸、三角、四角という最も基本的な形ですが、大人は三角を単に幾何学的三角としか感じないのに対して、子どもにとって三角は屋根や、帽子やテントであり、丸は太陽や顔や風船だったり、また四角は家や電車などに感じます。子どもたちの想像力は本当に豊かです。 そこで、実際に三角の立体的な屋根の家を作ってみたい、箱型の電車を作ってみたいという欲求が子どもたちに生まれます。しかし、そのためには紙という平面から、立体を作り出す必要があります。立体的な表現には平面的な表現と異なり、構想と展開の順序、つまり基本形態を組み合わせ、変化させていく能力を身につける必要があるのです。 せいしでは、この紙の立体工作は年少組の基本形(円柱、円錐、三角・四角柱)を作り出すことからスタートします。その前段階として子どもたちに一枚の紙を示し、この平面の紙を立たせるにはどうしたらいいかのを問いかけます。先日の年少組の保育日誌の記述です。教師が平面の紙を子どもたちに配り、その紙を立たせるためにはどうしたらいいと思う?、と子どもたちに聞いたときの子どもたちの回答です。@箱に立てかける。A黒板に貼る。B丸めて立てる。C壁のうさぎに持たせる(かわいいですね!!) etc. そのうち、ある子どもが紙を半分に折って「立ったよ」。これが平面から立体への第一歩です。実はBの丸めて立てる、も正解なのですが、今回は折って作る立体というテーマがあったので、これは次回にまわしてもらうことにしました。その後、子どもたちは、その折った紙を積み重ねたり、トントン相撲をして遊んでいたようです。 せいしでは使いませんが、市販の紙工作の教材には、よくプリント教材があって、切り線、折り線や糊代が印刷されているものがあります。その指示通りに切って、折り曲げて、貼り付ければ完成です。その結果は、子どもたちの技術や巧緻性の差が現われるだけで、作る過程での工夫や創造的な思考は必要ではありません。つまり造形活動の基本である、創造性や自己表現の能力が、全くといってよいほど養われることがないのです。 こうして、年少組では、紙の二つ折り、基本形の円柱、三角柱、円錐を、年中組では、それに加えて四角柱、三角柱をマスターして、さらにそれを組み合わせることによって様々な造形物を作り出していくことができるようになります。そして、これによって子どもたちは、クリエーター(創造者)としての能力をさらに高めていくことができるのです。 |
園長 遠山 和良 |
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