えんちょうのへや |
『スタンダード(基準)』 |
せいし通信 9月号 |
人はそれぞれに自分の基準をもっています。その基準をもとに判断や選択がなされ、また行動が決定されています。ですから自分自身の基準をもつことは、何にもまして大切なことです。もちろん、その年齢や生活環境に応じてこの基準自体が変化し、あるいは基準のレベルがあがるという事象も生じます。 子どもたちには毎日の生活の中で、そして様々な経験をかさねていく中で自分なりの「スタンダード(基準)」が形成されていきます。そしてその基準をもとに選択し判断し、行動するようになるし、そこに価値を見いだしたりもするのです。ですから、子どもたちには色々な経験をさせたほうがいいし、どうしたらいいのかの選択や判断、どう行動したらいいのかの決定も、できる範囲で彼らにゆだねたほうが、子どもたちにとって基準の形成に有用であり、将来的には必ずよい結果が出ます。 それを大人や親の価値基準で判断して子どもに指示を与えてしまうと、子どもは考えなくなるし、自発的な行動もしなくなる、いわゆる指示待ち人間になってしまうことも考えられます。それどころか自分自身の「基準」が形成されなかった場合には、思考や行動に関する拠り所がないわけですから、とんでもない反社会的な行動に走ったり、また善悪の基準さえもが確立していなければ、自分自身が起こしたその反社会的な行動についてもなんら省みることがない、というような事件がいま実際に起こっているのです。 何故なのでしょうか。 現代はあまりにも便利な世の中になってしまい自身の五体(手足などの全身)や五感(視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚)を使わなくても、さらには言葉でさえ、相手が目の前にいなくてもメールのやりとりだけですませてしまえる、そういう時代になってきたからなのです。 それに代わって、メーカーやコンピューターが基準を定めて、それを私たちが受け入れている状況です。たとえば目の前の食べ物が、食べ時なのかそうでないのか、危険なのか安全なのか、以前は自分の嗅覚や味覚を使ってその判断をしてものが、いまや食品には必ず賞味期限や消費期限が表示され、その期限が過ぎたものは廃棄されてしまいます。車で出かけるときはカーナビゲーションシステムが、目的地まで誘導してくれるので、地図と首っ引きで目的地までの行程をたどる、ということもなくなりました。ずいぶん以前のことですが、多発して社会問題となった、ガス湯沸かし器の事故も不完全燃焼防止装置というシステムに事故になりうるかの判断を委ねてしまったことから生じた事故といえるのかもしれません。腐った食べ物の臭いや味を体感したことがある子ども、地図を読み解く能力をもつ子ども、ガスを使う場合は換気が必要なことを実感として知っている子どもは、いったいどれくらいいるのでしょうか。 また様々なメディアからの情報は増え続け、何を基準に判断や選択をすればよいのか戸惑うほどです。その上、ニュースなどの報道番組を例に取れば、キャスターやその道の専門家や評論家といわれる人たちが、その個人的な見解にもかかわらず、それがあたかも国民的な総意や正論であるかのような言動や報道のあり方など、おかしなことばかりです。報道番組は事実とそれに付随した情報を提供して、判断や選択は視聴者に委ねる、という報道姿勢が当然と思えるのですが ‥。 自分自身の基準をもつことは大切なことです。それには子どもの頃からの経験が必要です。そしてそれらは決してコンピューターなどのバーチャルリアリティ(仮想現実)によって得られるものでも、機器や機材(人の生活を便利にしていると思われるもの)によって得られるものでもありません。 それには子どもの頃からのリアリティに満ちた実体験のフィールドが必要なのです。 |
園長 遠山 和良 |
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