６月６日に｢小さなコンサート｣を開きました。今月も片岡先生の素敵なピアノ演奏に子どもたちの目が輝いていました。　ピアノの名前の由来は、gravicembalo col piano e forte【(ピアノからフォルテまでの)強弱をもつチェンバロ】から、ピアノと呼ぶようになりました。楽器を表す名称では現在でもpfという略称が使われています。ピアノは弦楽器と打楽器の特徴を併せもつ楽器で88鍵(７オクターブと短３度)という広い音域を持っています。この音域はオーケストラの全音域より広いため、ほとんどあらゆる楽曲の演奏が可能です。現在のピアノの原型は1700年頃に登場しました。

　絶対音感という言葉をご存知でしょうか。絶対音感とは音の高さを直接認知する能力で、楽器などの基準の音がなくても音の高低を正確に認識できます。この絶対音感は６歳頃までのトレーニングで身につけることができるとされていますが、これは脳の臨界期とも関係しています。

　その脳の臨界期、例えば｢見る｣ことに関しては、３歳頃までに光の刺激がなければ一生物を見ることができない、｢言葉｣に関しては６~７歳頃までに言葉を話す環境が無ければ言葉を獲得することができないとされています。（1920年インドのミドナプルで保護されたオオカミ少女アマラとカマラの例のように）絶対的な音の高低感の認知能力である絶対音感も、言葉と同様の臨界期があるのです。しかし、脳に臨界期があるからといって、幼児期までに特殊な知的な早期教育を施さなければならないという考え方は間違っています。ただやわらかな感性をもつ子どもたちには、その心を揺さぶる美しいものや本物が必要です。

　ピアノは他の楽器とは異なり、自分でチューニングすることはできません。ピアノは定期的に調律しないと音が狂ってくるのです。狂ったピッチや美しくない音のピアノを子どもたちに与えることはできません。　幼稚園のピアノの調律を担当するのは、福岡在住のピアノ調律師の本田さんです。本田さんはチャイコフスキーピアノコンクールなどの国際ピアノコンクールで調律を担当するなど、海外でのキャリアも長い方です。７年ほど前、片岡先生の紹介で幼稚園のグランドピアノの調律をお願いしたところ、その調律後のピアノの正確なピッチや美しく輝かしい音色に驚かされたのです。それからはグランドピアノだけではなく、各保育室のピアノも定期的に調律をお願いしています。せいし幼稚園の保育室からは、毎日正確なピッチのピアノの音が響いていて、それが子どもたちの耳に届いています。

　ピアノを弾くことは、脳にとても良い影響があることがわかっています。ピアノは両手５本の指をフルに使い、左右別々の動きをします。人と他の高等哺乳類との違いは、10本の指を自在に操れることです。指先にはたくさんの神経が集まっていて、それが脳に直結しています。そのため指先は｢脳のアンテナ｣とも呼ばれています。ピアノを弾くことは、この脳のアンテナを刺激して脳を活性化させるのです。

　最近では、中高年になって改めてピアノ教室に通う人が増えているそうです。脳のトレーニングという意味でもピアノを通して音楽と向き合うことは、趣味と実益を兼ね備えていることにもなるのです。　当然、子どもたちの脳の発達にも良い影響があるのですから、ご一緒にピアノを始めてみるのも良いかも知れません。