たいちょうのへや |
『育てたいもの』 |
せいし通信 7月号 |
幼稚園教育は、満3歳から小学校に就学するまでと定められていますが、皆さんは、この幼稚園で過ごす時期に何を求められておられるのでしょうか。入園時に頂いた生活調査票を見ても、また国や県などの調査でも「友だちへの思いやりや信頼感」「遊びを中心として、健全な体や豊かな感性を育てる」「基本的な生活習慣や態度を身につける」など、大体このあたりに集約されるようです。 「健やかな体をもった、思いやりのある感性豊かな子ども」まさに子どもの理想像です。しかし、お題目はともかくとして、現在、このように子どもたちがうまく育つ様な環境が用意されているのでしょうか。確かにこのことは正論として認知されているようにも思います。しかし、その反面コマーシャリズムに乗って、相も変わらず知的早期教育がすすめられ、あたかもそれに乗り遅れると、子どもたちが落ちこぼれてしまうが如く喧伝されます。そしてそれは感性を育てる、などという言葉を隠れミノに幼稚園の現場にさえ進出し、それを取り入れて特色のある教育として打ち出す幼稚園さえもあることは残念です。 お父さん、お母さん、忘れないでください。子どもが生まれたとき、どんな子どもに育って欲しいと思いましたか。子どもたちは、生まれてまだ数年なのです。 少し考えれば、何を子どもに与え、何を与えていけないのか分るはずです。子どもたちは拒否できないのです。与えられたものに従うより他はないのです。もちろん子どもたちには知性の芽生えはあります。しかし、その芽だけを大切にすると、他の伸びていく芽を摘みとってしまう結果にもなります。子どもたちは「善い生活」を求めて、四方八方に芽を伸ばし始めたときです。伸びていくのは子どもたち自身なのです。 いま子どもたちに必要なのは、例えれば整備され規制された遊びしかできない公園ではなく、自然の林や野原です。つまり子どもが興味のある対象に向けて、自分自身に働きかけて、直接的な体験や経験をすることで、自分で考え行動できる子どもに育つことです。そして、その過程の中で磨かれ育つ豊かな感性を育むことができる。そのような環境が必要なのです。 忘れないでください。初めて子どもが生まれたとき、どんな子どもに育って欲しいと思ったのかを。そして初めての幼稚園で、どのように成長して欲しいと思ったのかを。子どもたちの成長に必要な環境が用意され、親や教師の温かい見守りと、決して介入しすぎない助力があったとき、子どもたちの「善い生活」を求める芽は豊かに育ちます。そして、それは子どもの将来を支える確かな基盤になるのです。 |
理事長 遠山 和良 |
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