あと半月余りで年長組は卒園、年中・年少組もそれぞれ進級の時期を迎えます。

年度初めは何となく頼りなかった年長組、幼かった年中組、まだ赤ちゃんの影を引きずっていた年少組・２歳児の子どもたちも、見違えるように成長して、素敵なせいしの子どもたちになりました。

　さて、子どもたちは３歳になる頃には、自分の体はある程度自分の意志どおりの動きができるようになります。また語彙も増えて、言葉もかなり自由に操ることができるようになります。そして母親に全面的に依存していた生活とは違う力が自身の中に備わってきたことを感じるようになります。こうなるともう母親の言うとおりでは満足できなくなり、母親の言葉や指示に従わなくなるようになります。　これがいわゆる「反抗期」といわれるものです・

　反抗というと否定的な悪い意味にもとらわれがちですが、この反抗、実は子どもが自分で考えたい、自分でやってみたいという気持ちの表れです。ですからこの時期には子どもの「やる気」や「意欲」を上手に育ててやらなければなりません。

　親の言葉に従わないので命令口調で無理に従わせたり、子どもの言動や行動を先取りして親が介入しすぎると、子どもの「やる気」や「意欲」を減退させてしまうことにもなり兼ねません。子どもたちは、自分でやることによって失敗を重ねながら経験的に物事を学んでいくのです。親としては危なっかしくて見ていられなかったり、もどかしくてつい手を出したくなりますが、ここは子どもたちとの我慢比べだと思ってください。

　子どもたちのやる気や意欲を引き出すためには褒めてやることです。子どもたちがやってみたことで良い結果が出たら必ず褒めてやることです。そうでない場合は、なぜそうなったのかを親子で考えてみることです。そうすることによって、親子の関係はより強固なものになります。

　「ピグマリオン効果」という言葉については、この巻頭言で過去にとりあげましたが、ギリシャ神話に登場するピグマリオンという男が女性の彫像に恋をしてしまい、その彫像の女性を妻にしたいと願い続けていたら、ついに彫像が人間の女性の姿になって現れたといわれる物語です。それから転じて、周りの人間の期待が与える影響のことを指します。

　一方、子供の成長に合わせて、我慢したり、待ったりする自律的な力を育てようとするとき、また社会的なルールを教えていくためには叱ることも必要になります。危険な行為、人を傷つけたり、迷惑をかけるような行動や言動に対しては、毅然とした態度で叱るべきです。

　ただし「先生に叱られるから」「お父さんに叱られるよ」などと人のせいにしたり「お兄ちゃんはいい子なのに」など、他人と比較した叱り方、「そんな子は大嫌い」などの突き放した叱り方、同じ行為を叱ったり叱らなかったりなどの一貫性のない叱り方は、子どもの心をいじけさせたり、混乱させる原因にもなります。

　親は一生懸命躾のつもりで叱っても親子の愛情や信頼関係が育っていないと、子どもには挫折感や劣等感を植えつけてしまいます。愛情と信頼に支えられた親子関係があるところでは、うまく褒めて叱ることが子どもたちの生きる力となり、子どもたちは充実した「反抗期」を過ごすことができるのです。