たいちょうのへや |
『日本語の豊かさ』 |
せいし通信 5月号 |
5月になりました。例年であれば新入園、進級した子どもたちが落ち着いた幼稚園生活を送れる時期なのですが、現在、日本中、世界中が新型コロナウィルス感染症で疲弊し、閉塞感に包まれています。一日も早く平穏な日々が戻ることを願うばかりです。 先日、新聞の社説欄で最近の若者の言葉として「エモい」が流行しているという記述がありました。私は全く聞き覚えがなかったのですが、昨年の秋に13年ぶりに改訂された三省堂の国語辞典「大辞林」にも収録されているとのことでした。考えてみれば、私が10代の若者と話をしたり、触れ合う機会などはこれっぽっちもないので納得ではあります。「エモい」の意味は、「心に響く」「感動的だ」などの意味で、語源は英語の“emotion(エモーション)”「感動する」ということでした。 似たような流行語では、平安の昔には「あはれ」「をかし」(風情がある、趣がある)がありましたし、昭和では「すごい」、平成では「やばい」、そして令和の「エモい」ということになるのでしょうか。 改めて私たちが使う日本語を眺めてみると、日本語には漢字(表意文字)とひらがな・カタカナ(表音文字)という3種の文字があります。漢字は4〜5世紀に中国から伝来し、それと前後して万葉仮名も出現。その後平安時代初期には、漢字を簡略化した「ひらがな」(安⇒あ、以
⇒い)が、そして漢字の一部を充てた「カタカナ」(阿⇒ア、伊⇒イ)が出現して、より多くの人々が読み書きができるようになります。これによって、源氏物語(紫式部)や枕草子(清少納言)もこの時代に創作されました。 また日本語のもう一つの特徴は、語彙やオノマトペ(擬声語・擬態語)の豊富なことです。例えば「風」(英語ではwind,breeze)一つをとっても、薫風(くんぷう)、疾風(はやて)、山背(やませ)、木枯し(こがらし)など、日本の四季に根差した様々な風の呼び名があります。そして、フワフワ、(雨が)ザーザーなどのオノマトペの多さも、他の言語と比較すると際立っています。 余談ですが、手塚治虫氏の漫画を英訳してアメリカで出版することになった時、静かな状況を表す「シ〜ン」(一説によると手塚氏が創作した言葉?)という言葉に、翻訳者はお手上げだったとか。日本の漫画文化も世界に認知されていますが、この日本語独特の擬声語、擬態語には苦労しているということです。 このように多様で豊かな日本語ですが、「ことば」の始まりは、子どもが満1歳ころの初語(片言)から始まり、幼児期には言葉が「伝達の手段」から「思考の手段」へと育つ時期にかかります。そして幼児期は「聞く・話す」の音声言語の基本語彙の獲得が急速に進む時期で、その獲得数は2歳で300語、3歳で900語、4歳で1700語、5歳で2000語、6歳で2400語ほどにもなります。子どもたちには、幼稚園生活の中で教師から、また子どもたち同士の遊びの中で獲得された、豊富な表現手段としての言葉で豊かな言語生活を送ってほしいと思います。 |
理事長 遠山 和良 |
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