お正月に子どもたちに配られるお年玉。現在では現金をポチ袋に入れて渡すようになりましたが、元来は、各家庭で祀られていた｢歳徳神(さいとくじん)｣、通称｢歳神(としがみ)｣に年末年始に五穀豊穣を祈願して供えられた丸餅を｢お下がり｣として子どもたちなどに配り、一年の健康と豊作にあやかるというものでした。お年玉は、歳神さまから、お下がりを頂く丸い玉のような餅なので、それを「お年玉」と呼ぶようになったという説もあります。

　お正月は、お年玉などで子どもたちが現金に触れる機会も増えると思いますが、子どもたちが親から貰う｢お小遣い」。調査によると、その開始時期は小学校一年生が最も多く、また金額は月額500円となっています。因みに小学校4年生では1000円、中学校1年生で2000円が平均的な小遣い額。また、小遣いを渡すのに、お手伝いをしたときや、テストの成績に応じてという渡し方もあるようです。お小遣いの目的には、お金の管理能力を身に付ける、お金の使い方や貯め方を知る、お金を稼ぐ感覚を身に付けることなどがあります。

　日本には学校での金融教育という教科はありませんが、改訂された小学校の新学習指導要領では、令和2年度より段階的に学べる金融教育の内容が盛り込まれています。また今年度より高校の必修科目の家庭科では資産形成の授業が行われ、家計全体の管理の仕方や生涯を見通した資産計画の中には、貯蓄や投資の基本についても授業の中で学ぶようになります。

　日本では、子どもにお金の話をすることをタブー視する傾向がありますが、これではお金に対してのスキルは身に付きません。金融教育のベースは、まず自分のものと他人のものを区別することや、物を大切にする姿勢などを育むことにあります。金融教育は幼児期からスタートして、小学校からはお小遣いを通して、更にお金についての理解を深めることが必要です。お小遣いは渡すだけではなく、どう使ったかに関わることで管理能力を養うトレーニングになります。

　クレジットカードや電子マネーが普及する現代は、子どもたちが｢現金｣を使って金銭感覚を身に付ける機会が減っています。しかし子どものうちに正しい金銭感覚を身に付けることは、将来お金を使う、貯める、増やすことを考えるためには重要です。お正月はお年玉を通して、子どもたちとお金のことに関して話し合うよい機会かも知れません。

　現在日本で発行されている貨幣は、1円、5円、10円、50円、100円、500円の硬貨に1000円、2000円、5000円、10000円の紙幣の計10種が流通しています。子どもたちが実際使うのは、1円から500円までの硬貨が主になると思いますが、流通している中で一番古いものは、昭和30年から発行されているアルミ貨の1円玉。しかし流通している10円玉青銅貨の中には、昭和26年～33年に発行された(昭和31年は発行されていません)いわゆるギザ10(10円玉の淵にギザギザが刻まれている)が含まれていて、時々ひょっこりと財布の中から顔を出すことがあります。昭和26年といえば、もう71年も前のことです。70年以上も日本中を旅している10円玉。いまも誰かの財布の中で、次の旅に出かけようとしているのかも知れません。