本講義の概要と目的
本講義(刑法Ⅱ)の概要は、刑法の基本原理や犯罪の一般的な要件を考察する刑法総論(刑法Ⅰ)とは異なり、刑法典上の個別的な各犯罪類型を考察することです。その内、前期(刑法ⅡA)は、生命・身体・自由・名誉といった個人的法益を侵害する犯罪類型を考察し、次いで、社会法益および国家法益を侵害する犯罪類型について考察しました。そして、後期(刑法ⅡB)は、いわゆる財産犯について、個別的に考察します。
財産犯は、窃盗罪とか強盗罪のように、普通の日常生活でもよく知られた犯罪ですが、一歩でも法的な考察に踏み込めば、いずれも相当に難しい問題点を含みます。しかし、刑法典に規定された条文を手元に置いて、問題となった論点についての判例の核心をゆっくりと読んでみればよいでしょう。初めから、判例の全体を読み込むことは無理でしょうが、本講義では、各判例の核心部分を取り出して、紹介しています。だから、すぐに理解するのは無理でも、この作業を持続すれば、徐々に、各財産犯の問題点がわかってきます。
そして、窃盗・強盗・詐欺といった各々の財産犯について、まず、何が第1次的な保護法益となっているかを理解できるようになり、次に、その第1次的法益の侵害形態に着目して、2次的に保護されている法益を理解できるようになれば、本講義の目的は達成されたと言えます。がんばって取り組んでください。