陶石は単味でも磁器化する陶磁器用原料であり、流紋岩類などが熱水変質作用を受け生成した白色緻密な岩石です。天草陶石は日本を代表する陶石で、有田焼をはじめとする高級磁器や高圧碍子の原料として用いられています。最近、高品位陶石が枯渇化傾向にあるため、低品位陶石を有効利用する必要に迫られています。各種の低品位陶石中には、長石、褐鉄鉱、菱鉄鉱、方解石等が不純物として含まれており、その耐火度は、不純物の含有量により、SK12〜26と変化します。この天草陶石の主要鉱物成分は石英、セリサイト、カオリンからなり、その耐火度はほぼSK26です。
 九州工業技術研究所(現、産業技術総合研究所九州センター)では、1980年から6年間にわたり、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各県の技術センター並びに民間企業協力のもと、低品位陶石の有効利用技術に関する共同研究を行いました。 研究の一環として、当所では、天草陶石鉱業協同組合並びに熊本県工業技術センターの協力を得ながら、特等石から未利用の低品位陶石までを含む各種陶石を採取しました。採取陶石は、粗砕・粉砕・微粉砕後、粉末X線回折による鉱物組成の定性・定量、蛍光X線による化学組成の定量、熱天秤(TGA)による加熱減量の測定、熱機械試験装置(TMA)による耐火度の推定を行いました。
 このデータベースでは、218種類の採取試料の測定生データ、鉱物組成・化学組成と熱膨張曲線の測定による耐火度の推定値との関係を含む全データを公開しています。 なお、このデータベースは、産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門在職中に作成しました。2004年8月/ 木村邦夫  kmr@kumin.ne.jp/改訂:2016年3月